【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 そうすれば、いつかきっとルネリアがどこかへ行きたいと行ったとき、離してやることが出来るから。

 ただ引き取るより対価を交わす関係であれば、ルネリアの評価を傷つけることもないと、そう思ったからだ。だから嫌われようとひどい態度をとっていた。初めからグレンはルネリアの傍に永遠にいられる事はできないと分かっていた。いつか別れが来る。公爵家がきちんとルネリアについてを知り、害を成さないと決まったら、ルネリアの家族が王都を出たら、グレンはルネリアを王都へと、人の元へと、光の下へと返すつもりだった。

 別れの時には、生涯困らぬ分だけの給金を渡して。だからそれまでの間、支えることで償おうとした。与えることで、恩を返そうとした。

「……だから、貴女を、引き取り……、俺は貴女に……償いたかった。少しでも、お礼が出来ればと、そう考えていた……。でも、その間すら、今まであの間すら……与えられていたのは俺だった。救われていたのは、いつも俺だった。貴女のおかげで……俺は生きていることが許されている気持ちになれた。貴女のおかげで、生きていることが……素晴らしいと……思ってしまったんだ」
「グレン様……」

 ルネリアと過ごす日々はグレンの深い沼を歩き続けるような生活の中で、束の間の優しい時間だった。それは自らの出生を憎悪し、否定するグレンにとっては残酷でありながら、まさしく温かな時間であった。