突然の衝撃にマリアは後ろに倒れこむ形となり、その手から鉄杭を滑り落とす。ルネリアは素早く体勢を変えると、枷のついた手で杭を握り、そのままエーベルが先回りした部屋の扉ではなく、バルコニーへと突っ切るように走った。
そうして硝子扉を無理やりこじ開け、飛ぶようにして手すりに立つ。先ほど、座っているときにルネリアが見立てた通り、外は、王都の町並みを見下ろすように広がっている。移動手段は分からないが、呪具で何かをしたのだろうと、ルネリアは他人事のように思いながら、目を見開くマリアとエーベルへと顔を向ける。
「私は、あなた達の言いなりにはなりません。あなた達の思い通りになんて、グレン様を傷つけさせるなんて、絶対にさせません。私の主人は、グレン様ただ一人。あの人が、私の全てです」
強い瞳で宣言して、二人を見下ろすようにルネリアは言い放つ。ルネリアの背には大きな満月が浮かび、冷たい風が頬を撫でた。杭を握りしめ、ルネリアはじりじりと、ベランダの手すりの外側へと足を擦っていく。
このまま、杭ごと地の底へ持っていこう。銃は持っていけなかったけれど、きっとグレン様なら……。



