【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 フードを深く被った男が、マリアの部屋へと入っていく。そして後ろ手に扉を閉めた。

「なに……あなた。王家の遣いにしては、随分とみすぼらしいわね」
「まぁ、僕のことは気にしないでいいよ。今君が気にするべきは、僕じゃない。君の家族のことだからね」

 含みのある言葉に、マリアは眉を吊り上げ「どういう意味?」と不愉快さを隠さない。しかし男は気に留めることもなく、楽しそうに笑う。

「今日、君のお父さんとお母さんは、僻地へと出発したよ。とっても寒い場所でね。村人は貧しいものも多くて、水なんかも汚い場所だ。きっと王家は、自分たちで死罪にするのは体裁が悪いと、勝手に死んでくれるような場所へと送ったんだよ。酷いねえ」

 男の言葉に、マリアは俯く。自分のした振る舞いで、父と母が傷ついた。そのことに対してだけ、マリアは罪悪感を感じていたからだ。