「吸血鬼だと、言って……」
ルネリアの頭の中に、少年の姿が現れる。黒い髪に、紅の瞳。ふて腐れたような表情が、目の前のグレンと重なった。
「グレンさまは、あの時の……?」
ルネリアの瞳が、驚きに揺れる。次の言葉を紡げずにいるとグレンはゆっくりと頷く。
「そうだ。ハーミット家の屋敷に、ある親戚の屋敷が近く、夜散歩に出かけていたら、貴女と出会ったんだ。それまで、吸血鬼は俺の出自や権威に恐れ、はれ物に触るようであった。人間は当然俺を恐れる。どんな社会にも相容れない存在だった。そんな時に、貴女に優しくしてもらえて、自分以外の生き物で、俺にただ優しく在る存在があったのだと、初めて知った」
「そんな、私は大それたこと……していません……ただ、手当てをしようとしただけで……」
ルネリアは今までのグレンの優しさの理由を知り、そんな些細なきっかけで自分へと行動するグレンがどれほど傷ついた人生を送ってきたのかと考え、また胸が苦しくなった。重ねられた手に、さらに自身の手を重ねると、グレンは穏やかに笑う。



