【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 四つ。それはルネリアが自身の母を亡くした時と変わらぬような頃合いであった。ルネリアは母が亡くなったことを思い出しながら、グレンの言葉に耳を澄ます。

「母は、俺が悪くてたまらないときと、ただの幼子に見えたときとあった。そして徐々に俺を子供として認識することが減り、俺は親戚の屋敷へ預けられることが増えた。母が死んだのは、そうして俺が親戚の屋敷に預けられ、しばらく経ったころだった」

 ルネリアは黙ったまま、グレンの幼き頃を、先代と夫人の肖像画通すようにして想う。夫人はグレンに似た優しい瞳をして、前当主は同じ髪の色をしている。よく似た親子で、肖像画の二人はとてもいい夫婦に見えるのに、どうして実際はそうではなかったのかと、グレンにとって優しいものではなかったのかと、ルネリアの胸は痛んだ。

「両親が死んだと、聞かされて、この城に戻ることになって。俺は親戚の制止を振り切って、いつも母が過ごす広間に向かった。凄まじい光景だった。戦で何度も残酷な光景を目の当たりにしてきたが、あれほどまでに凄惨な光景は見たことがない。清掃は、何度も行われていたと聞いたが、それでも到底戻せないほどに壁は血に染まり、何もかもが赤い飛沫で濡れていた。広間の中央には大きく焼け焦げ、大きな血だまりの跡もあって……すぐに分かった。両親はここで死んだのだと」

 グレンはそう言って、肖像画を離れ、書庫の中央に立つ。そしてルネリアに目を向けた。