どれほど、どれほど辛かっただろう。
この書庫には、グレン様のものが何もない。児童書も、物語も教養を身に着けるようなものも何もない。あるのは全て、メアロードの領地に関する、先代が仕事に必要とする資料ばかり、そしてそれ以外は、夫人が扱うようなドレスについての書物だけ。グレンが読むような、幼い子供が扱うようなものは、何一つ見当たらない。
ルネリアは、やるせなさに手のひらを握りしめる。辱められた夫人は、責められない。けれど先代は、どうして愛した人との子供を顧みることがなかったのか。どうしてこうまでして、その視界に入れることが出来なかったのか。
ルネリアの胸に憤りにも近い感情が沸き立ち、グレンの肩に触れた。そんなルネリアの表情を見たグレンは、複雑そうにルネリアを見つめ、「俺の、父と母の」と呟いた。
「死の原因を、知っているか?」
「はい、永遠の誓いという契約が、原因だと……」
「……は。物は言いようだな、あんなものは呪いだ」
ルネリアの言葉に、グレンは皮肉るように笑った。



