【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


「……私は、グレン様が一人で苦しまれていると考えると、苦しくなります。グレン様と私は別で、痛みを感じているのはグレン様であるはずなのに、この胸は軋むようで、喉が詰まったように苦しい。今まで、こんな風に誰かを思うことなんて、無かったのに」

 ルネリアは今まで、痛みについて鈍い性質だった。ハーミットの家で暮らすうえではそうしなければ生きられなかったからだ。どんな仕打ちも侮辱も、膜を通して他人事のように見ていれば苦しくなかったからだ。

 しかしその膜はグレンと過ごす日々の中で、ルネリアの中から消失していった。そうして残ったのは、たった一つのルネリアの心であった。

「グレン様が吸血鬼であることに、私は驚きましたが、恐怖は抱きませんでした。でも今私は、グレン様が一人苦しんでいることが、そんなグレン様に何もできない無力さが、すごく怖い」

 一つ一つ、グレンと過ごしていく中で芽生える想い。喜び、怒り、悲しみそして安らぎ。グレンと過ごす中で覚えた感情の一つ一つが、今まで迷いなく言葉を発していたルネリアからそれを封じた。