グレンの母である夫人は、かつて人間であった。しかし、先代であるグレンの父に攫われ無理やり手籠めにされた結果、グレンを出産することになった。先代は夫人が我が子さえ産めばその心を手に出来ると考えていたが、その夢は終ぞ叶うことはなく、先代は実力行使に出た。命を握れば、自分に縋りつくと考えたからだ。
しかし夫人はある手段を用いて、そして先代の思惑を利用する形で、本懐を遂げたのである。
生前は憎しみの象徴、自分を辱められた象徴として夫人はグレンを憎んだ。一方の先代はグレンに関心がなく夫人を求めた。グレンはどこまでもないがしろにされていた子供であった。
自分には母がいた。しかしグレンには誰もいなかった。きっとグレンにとってこの世界というものは、自分にどこまでも残酷なもので、期待をしても返ってこなかった世界なのだろうと、ルネリアは思う。



