【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 それが、城にある書庫だ。

 ルネリアは城を訪れ、散策をするようなことはしなかった。グレンが手洗い場、水場、風呂場、食堂など必要な場所の案内をしたことで、それ以外の部屋には触れないほうがいいと思ったのだ。

 だからこそグレンが城の書庫について触れないことも、掃除を避けさせることも気に留めていなかったが、グレンとの距離が離れた現在、半ば縋るような気持ちで彼女はその書庫への関心を深めていた。

 ハーミット家の書庫では、必要最低限の教養のための書籍以外は、ハーミット家の歴史に纏わる本に占められていた。物語もいくつかあったが、それはルネリアの母が生前彼女の為にと購入したもの。棚の半分以上はハーミット家の人物がどんなことを成し遂げたかの自伝書籍であった。