【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


「では、血に濡れて、私に見えないように小屋に通われていたんですね」
「そうだ。メアロードには、四日に一度、王都で死んだ者の死体が送られて来る。それを血を欲するもので分配し、血をとって、埋葬する。いわば盗賊のようなものだ。そんな姿を私はお前に見せたくなかった。伝えたところで人間に理解できることではないし、恐怖が勝る。今お前がこうして淡々と私の話を聞いていることなんて、奇跡に近いくらいだからな」
「そんな……」

 自嘲気味に笑うグレンに、ルネリアの胸が軋む。ルネリアが首を横に振ると、グレンはそれを笑って「いいんだ」と話を続けた。

「否定はしなくていい。怖がるなという方が無理がある。幼い子供ならまだしも、もうお前はものの摂理を理解できるようになった。お前の抱いた感情は悪じゃない」
「違います、グレン様、私は……」
「質問は、ないか? ないなら、今夜の話はもう終わりだ」

 ルネリアの言葉を、グレンの瞳が明確に拒絶した。その瞳に射抜かれ、ルネリアは言葉が紡げなくなる。まただ。言わなければいけないのに、次の言葉が紡げない。するとルネリアの沈黙を肯定ととらえたグレンは、ルネリアの背を押し、促すように小屋から出す。

「……、お前がこの城から出て行ったら、俺はすぐにお前を連れ戻しに行く。お前がいくら私に怯えようと、私は時が来るまでの間は、お前を侍女として雇い続ける。だから黙って、俺に仕えろ。お前が私に従順である間は、俺はお前に害を為さない。血だって吸わない。分かったな」
「グレン様っ」

 ルネリアが答える前に、扉は閉ざされていく。ルネリアが扉を押そうとしても、びくともしない。ルネリアの声は届かないまま、グレンによって扉は固く閉ざされていった。