「見目はどんなに人間と同じでも、中身はまるで違う。王家には、吸血鬼に対抗する為の呪具があるが、今は三つしかない。それも使えるのは一度きり。いわば吸血鬼側が譲歩し、共存を望むことで成り立っていた。それを先の王は分からず、かといって自分たちの脅威になると駆逐しようとした。しかしそのあとの新王は、人ならざる者を軍事力として取り入れ、そしてそれ相応の地位を与えることで納めようとしたのだ。だからこそ、領地を与え、豚と、牛、鶏などの飼育場を作り、墓地を作った。そして王家の者たち以外の人間の墓は皆そこへ埋葬するよう定め、家畜と民の死体を贄として私たちに捧げた。このメアロードの領地にそういった施設が多いのはそういう理由だ。それこそ二百年以上昔は人ならざる者たちの方が圧倒的に多かったのだと聞いたことがあるが、まぁ、今はお前のようにただの人間の方が多い」
「……だから、袋が血で染まっていたんですね……」
グレンは静かに瞳を伏せる。そしてルネリアの返事に遅れるように頷いて、また話を続けた。
「……私の仕事は、この国の国境を守ることだ。そして同じようにそれに携わっている者は吸血鬼だ。国にとっては、死なない兵士ほど都合のいいものはいない。末端の者には人間が混じっているが……キャロラインも、私の幼馴染なんかじゃない。奴は諜報員として活動していて、各国を巡っている。だからお前もキャロライン家なんて知らなかったんだろう。そもそもあの家は、諜報活動のために用意された偽りの家だから」
「では、キャロライン様も、吸血鬼で……?」
「ああ。奴は、私よりもずっと長く生きている。記録を作ることはないから、重要な書類も奴の記憶の中に納められていく。何百年も生き続け死なない吸血鬼は、国の影として適材だ」
ルネリアは、グレンの話について、すんなりと、まるで杯に水が注がれるように自分の頭の中へと入っていくのを感じた。少しずつ今までの疑問が解消されて、溶けていくような、だからグレンは何も言わなかったのだとルネリアは納得した。そしてずっとグレンが秘密を抱え、自分に対して偽っているのは辛かっただろうと憐れむ。



