【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 何か、何かグレン様を元気づけられるような、言葉ではない、手段は……。

 ルネリアは乳白色の湯面に視線を落とし、考えていく。厨房での調理は禁じられている。街に出ることも、グレンの許可なしでは不可能だ。グレンを喜ばせる特技も自分にはない。ひとつひとつ順序立てて、何かグレンを喜ばせられるようなことを探していると、ルネリアの脳裏にある光景が過った。

 そうだ、お花を贈ろう。花束を、グレン様に。

 ルネリアは毎日温室でグレンと花を見ている時のことを思い出す。その間互いは基本的に黙ったままで、会話はほんの少し。しかし穏やかな時間が流れていた。

 お墓参りの時に持っていく花束を作ろう。そして、瓶に香油を入れて、花を保存させる方法で、持って行き易いようにしよう。

 一瞬、ルネリアの頭に、そんなことでグレン様は喜ぶのだろうかという疑問が生じる。しかし、自分に出来ることはそれしかないのだと奮い立たせるようにして、ルネリアは立ち上がり、風呂場を後にした。