【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 本来、ルネリアは入浴中、湯面をじっと見つめるようなことはしない。次に風呂を待つ主人のためにと迅速に髪と身体を洗い、主人が心配するからと湯船で身体を温め素早く退出していく。にも関わらずルネリアが風呂場で物思いにふけっているのは、他ならぬグレンが原因だ。

 グレンの力、グレンの隠していること、グレンの家族。一つ一つ、疑問を浮かべるたびに、ルネリアはグレンが、自分になりたい、自分の役に立ちたいと泣いた姿。あの姿を思い返す。

 自分を助けてくれた人、自分の歪みに気付かせてくれた人――ルネリアはグレンについてそう感じている。

 だからこそグレンの力になりたい。役に立ちたいと強く、強くルネリアは思っている。しかしその想いがグレンにとっていいことになるかは分からない。それが判断できるほどルネリアはグレンといるどころか、人と接して生きていない。かける言葉を思いついても、突拍子がないような気がして、そもそもそんな言葉をグレンが求めているのか分からなくて、そして声をかけたいと考えているのは自己満足な気がして、ルネリアは最後には口を閉じるしかなくなる。

 前まで、こうじゃなかった。

 幼い頃は、もう少し活発で、ものをしっかり話していたと、ルネリアは自身について振り返る。屋敷に突然現れた見知らぬ少年に声をかけたことだってあった。しかし、現在何度でも話をしたはずの存在であるグレンに声がかけられない。