ルネリアはまるで嵐の前のようであると感じた後、メアロードの城に訪れ、グレンの口から初めて家族の話題が出たことに気付く。
今まで気付かなかったことが不自然なほどグレンは家族について語らなかった。グレンは自分の知人についても語ることが無かったこともあり、家族に触れないことすら当然であるようにルネリアは感じたが、そもそも使用人どころか家族がこの城にいなかったのはこういうことだったのかとルネリアは考える。
(グレン様は、家族をどう思っているのだろう)
ルネリアは、黙ったままグレンを見つめた。グレンの瞳は暗い紅色をそのまま映しこんだような瞳で、比較的いつも通りでいるようにも見える。しかしルネリアにはどこか胸にひっかかる何かを感じて、声をかけたいのに次の言葉が見つからない。
「話は以上だ。食事を再開するぞ」
グレンはルネリアの視線に気付かないまま、置いていたフォークを手に取り窓へと視線を移した。ルネリアも追って窓へ目を向けると、そこには月が暗い夜に穴をあけられたようにして浮かんでいた。
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その日の晩。ルネリアは風呂に身体を沈め、己を包む乳白色の湯をじっと見つめていた。



