【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 言いたくないのなら、言わなくても大丈夫です。ただ、いつも通りグレン様とお話がしたいです。そう一言、言ってしまいたい。けれどもしその一言でグレンを不安にさせてしまったら、その一言ですらグレンの枷になったらと考えるとルネリアはただ黙っていることしか出来ない。それくらい、ここ最近のグレンには危うさがあった。

「ルネリア」

 じっとスープの波紋を見つめ、物思いにふけるルネリアにグレンが声をかけた。ルネリアが顔を上げると、グレンは決まりが悪そうに視線を彷徨わせながら口を開く。

「これから、あと、十日程先か。俺はメアロードの廃城に向かう」
「廃城……?」

 ルネリアの頭に、また新たな疑問が浮かんだ。メアロードの城は、ここのはずだ。それ以外にも城があるのだろうか。そう考えながらルネリアはグレンの言葉を待つ。

「前に、私の父と母が住んでいた城だ。二人が死に、今はだれも使用していない。そこに俺は十日後、所用のために向かわなければいけない。だからその日は前日の晩に城を出る。次の日の夕刻には戻れると思うが、その日は城の敷地内だけではなく、城の外に出ることを禁じる。だから鉢植えは前日に城に入れておけ」

「はい」