【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


――いいか、貴女は素晴らしいんだ。絶対に、誰がどんな妬みや嫉妬で貴女を貶めようと、貴女の素晴らしさは……!

 グレンの必死な表情、そして強い眼差し、力を込めた声が色鮮やかにルネリアの頭の中に蘇っていく。そうしてルネリアは、グレンに大切に扱われている。そんな自分が不当に扱われていた過去が、まるでグレンすら踏みにじられているように感じて過去のことを許せなくなっているのだと気付いた。

(そうか、だからわたしは、怒っているんだ。グレン様すら踏みにじられてしまったんだと、考えて)

 自分が不当に扱われていた過去があっても、別にグレンが異母姉たちに侮辱されているわけではない。それなのに声に出して呟くと、ルネリアは無性にグレンの顔が見たくなった。明日になれば会えるというのに、何故だか無性に胸が熱く、ルネリアの中でグレンへの焦燥にも似た感情が増していく。

 ルネリアは吐き出すようにゆっくりと息を吐いてから、階段に足をのせた。一つ一つ、正体の見えない感情に折り合いをつけるように階段を上がり、丁度踊り場へと差し掛かったころ、ルネリアの背後に爆音のような音が響く。

 今のは、確実に何かが爆発した音だ。

 ルネリアはそう確信しながら振り返り、あたりを見回すが、玄関ホールはいつも通りの光景を保ったままで、何かが破壊された気配はない。首をかしげながらルネリアは段差の上に置いた足を下にずらすと、足場の見通しが甘くルネリアの重心は下へと傾いた。