しかし本や人々の言葉によって認識した情報によって、愛する人の傍にいられることは幸せだということをルネリアは知っている。子をもった母に乱暴する人間はいないだろうし、側には廃されたといっても王太子がいるのだ。自分と同じように罵倒されることもないだろう。だからマリアは幸せだとルネリアは判断した。
しかし、そう考えるとルネリアは少し、気持ちがさざめくのを感じた。耳の奥底で、マリアが自身を罵倒する声が聞こえる。一生懸命育て、押し花にした花をぐちゃぐちゃに潰された光景が、頭の中で鮮明に映し出されていく。ふつふつと湧き上がる感情に、ルネリアは心底戸惑う。
(なんだろう……嫌な気持ちがする)
ルネリアは、その想いの正体について考え始める。今までこんな感情は自分に無かった。これではまるで、自分がマリアに対して憤っているみたいじゃないか。ルネリアはそう考えて、はっとする思いで自身の胸に手を当てた。
(私は怒りを感じている……?)
自身が、踏みにじられていた。侮辱を受けていた。そのことについて、ルネリアは今初めて怒りの感情を抱いた。もう過去のことだ。姉であるマリアが幸せだからなのか。ルネリアはひとつひとつ自問自答をしてく。するとグレンの声が頭の中に響いた。



