【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 マリアは日頃からルネリアに激しい怒りをぶつけていた。優しい父親は、私だけの父なのだと。そして今まで自分と母が父と同じ屋敷に住めなかったのはルネリアの母と、そしてルネリアのせいだと毎日のようにルネリアを罵り、痛めつけていた。しかしいつの日か、マリアが夜会で王太子と出会い、接近し始めた頃からか、ルネリアへの暴力は減り、その代わりに嫌味が増えた。「私はお前と違って幸せになるの。お姫様になるのよ。ずっと貧しい暮らしをしていた私だから、その苦労が報われてお姫様になれるの。そう決まっているの」「お前は地獄がお似合いよ、この性悪女」とルネリアを見てはせせら笑った。

 そんなマリアは、王子が廃嫡されたことで、平民へと戻っていた。ルネリアの父と継母は平民として僻地へと飛ばされ、ルネリアも平民となり放逐された。

 だがマリアは王子の子を腹に宿していること、王子は廃嫡されたといえど王家の血を引くことに変わりはなく、また病以外での廃嫡は初であったため、本人にその力はなくとも反乱や宗教に利用され後々国営の障害になるのではと、ルネリアのいるメアロード領とは反対の、西の豪雪地帯の村へ王家の監視のもと住むことが決められた。

 ルネリアはマリアに度々「お前は恋を知らない」「誰かと愛し合うなんてこと、一生出来ない。お前の卑しい母親と同じ」と言われてきた。そのマリアの言葉に、ルネリアは反発する感情を抱かなかった。本当にそうだと思ったからだ。

 自分を家族として愛してくれた母が亡くなってしまった今、自分を愛する存在は、この世界から消えてしまった。社交界で男女が会話を嗜んでいるのを見ても、別世界のものとしてルネリアはとらえていた。ルネリアは今、愛を知らない。