「では、私は失礼いたします」
「ああ。早く寝ろ。もう寝ろ。すぐ寝ろ。体が冷める前に。早くな。まぁ冷めてもまた入ればいい。いくらでも入れ直す。何なら入りたいときに入れ。湯は沸く」
「ありがとうございます」
元々、風呂場に鍵は取り付けられていなかった。しかしグレンが男と二人きりの城で風呂場に鍵が無かったら恐ろしいだろうと取り付けたものである。
それも一つだけではルネリアが不安になってしまうのではと考えたグレンは、風呂場の扉に五つ、脱衣をする部屋へと向かう扉に五つと、十の鍵を取り付けている。
しかしルネリアが現在使用しているのは城の廊下から脱衣をする部屋への扉に一つのみで、鍵をかけている理由もグレンに鍵をもらったから、そして自身の見苦しい入浴姿をグレンの目に入れるわけにはいかないという理由だった。グレンもグレンで自分の身体なんてルネリアに見せる訳にはいかないと風呂に入るときは鍵をかけるが、二人はまさか双方が同じ理由で鍵をかけているなんて、全く想像していない。
グレンはルネリアが部屋から出ていく後に続こうと、慎重に足を浮かせていく。そうしてルネリアへ一歩足を踏み出そうとした瞬間、ある気配を察知した。静かに後ろを売り向き、窓へと目を向けながらルネリアに「待て」と命じる。
窓の外は日が沈み黒一色であるが、グレンには呼んでもいない客人が来たことがありありと分かった。部屋に置かれていた剣を手に取り、ルネリアに「お前は隠れていろ」と抑揚のない声で命じてから、部屋に侵入される可能性もあることを思い立つ。そしてルネリアに着いてくるよう促した。



