【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約



 ルネリアと街へ出かけ、十日が経った夜。グレンは絶望を覚えながら、己の執務机に額をこすりつけていた。

 本来ならば現在の時刻に、グレンは部屋でただ執務机に額をこすりつけ、身体をゆすっているほどの暇はない。

 何故ならば、ルネリアが次に待つ主人を冷めた湯に入れさせる訳にはいかないと手早い入浴をしている間に、書類仕事を片づけ、厨房で明日の食事の仕込み、庭の手入れ、ルネリアに頼めない危険な場所だとグレンだけが考えている棚が多く、比較的重たい……といっても生まれてまだ三年も経たない子供ほどの重さの書類がしまわれている倉庫の整理、城に鼠一匹でも入ればグレンが直ちに察知するにも関わらず暗いところは危ないとルネリアに出入りを禁じている地下室の清掃、個人的な理由でルネリアを絶対入れない書庫を驚異的な速度でこなし、あたかもただルネリアが出るのを待っていただけで、清掃など一切していない顔をしなければいけないからだ。

 しかし、そんな忙しいはずのグレンが絶望し闇雲に時間を潰しているのは、自分の不甲斐なさに嫌気がさし、ルネリアに物を贈ろうと街に繰り出したのにも関わらず、戻っても店の閉まりだす頃合に街の最西端に向かった挙げ句、自分が情けなくなり、ルネリアの前で涙を流していたことに他ならない。