そんな決まりきった世界に、突然降ってくるようにして現れたのが、グレンという存在だった。
自分のような人間の為に、食事を作り、ものを与えようとするグレンに感謝すると同時に、強い戸惑いを覚えた。なぜならば、ルネリアにとって自分に与え、肯定しようとする存在は、母以外にいないと思っていたからだ。
だからグレンの優しさに感謝しながらも、いつかグレンがルネリアを役に立たずで、どうしようもない人間だと判断をして、今までのことがまるで幻想であったかのように自分を疎むのであるという想像をルネリアは繰り返していた。
自分を退けるグレンの姿を思い描くことで、心の安定を図っていた。こんなにもよくしてくれるグレンに対し、どんなに非礼なことをしているのかは痛いほどルネリアに分かっているのに、彼女はそれをやめることが出来なかった。
しかし、ルネリアは今、まるで世界で一人ぼっちになってしまったかのように俯くグレンに対して、自分が想像よりずっと酷いことをしていたのだと思い知った。
「私は、グレン様に優しくしていただくたびに、いつかきっとグレン様は私がどうしようもない役立たずと知って、皆と同じように、私を見る目が変わっていくのだろうと、そう考えておりました。朝ともに花を愛でることもいつか無くなってしまうのだろうと、終わりのことだけを考えておりました」
絞るようなルネリアの言葉に、グレンが顔を歪める。辛そうなグレンの表情にルネリアは胸がまた痛んでいくのを感じながら、言葉を続けた。
「しかし、皆とグレン様は違うのだと……今はっきりと、そう思いました。……だって、グレン様は、私の為に、こんなに綺麗な涙を流してしまうほどに、優しい方だから」



