【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 周囲は人気もなく、栄えていた街並みも薄れ、道の先には暗い森が広がっている。太陽も沈み始め、青かった空を橙に染まっていた。

 着いていくのがやっとでグレンに声すらかけられなかったルネリアは、ようやく彼が停止したことで、息も絶え絶えになりながら声をかける。

「あ、あの、ぐ、グレン様」

 ルネリアは何とか呼吸を整えようとするが中々上手くいかない。そんなルネリアの様子を見たグレンは、自分がこれまで、停止することもなくルネリアを振り返ることもなく、ただひたすらキャロラインからルネリアを遠ざけようとし、闇雲に歩かせたことに気付いた。

 慌ててルネリアに向き直ると、グレンはおろおろとしながら手を彷徨わせる。

「す、すまない……。水か……飲み物を用意して……、けっ、怪我はないか」

(しまった……。俺の足の速度では、ルネリアに負担があることを失念していた……。なんてことをしてしまったんだ私は……。せめて担いで運んでいれば……。怪我はないだろうか……。心臓に負担がかかっていないだろうか……? 医者を呼ぶか……?)

 グレンが慌て街の医者までの最短での道のりを計算している間に、ルネリアは息を整えていく。そしてようやく言葉が紡げる状態にまで持ち直すと、改めてグレンを見た。

「あの、私は大丈夫なのですが……グレン様は、お加減が優れないのでしょうか……」