【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 実際グレンは視力が悪いわけではない。むしろとても優れていて、銃を持たせればどんなに遠く離れた敵も打ち抜き、剣を持たせればその筋力による投擲によって突き刺すことができると、恐れおののかれる存在だ。そして誰かに親切であることもなく、誰とも関わろうとしない。領民に対しては若干柔らかであるものの、そうでなければ誰に対しても平等に冷酷だった。

 しかし、実力はトップクラス。そんな男を陰から見つめる令嬢が数多いる。というのが現実である。よってグレンは周囲の令嬢どころか周囲の者たちから、敬われはするものの決して明るく慕われる存在ではなかった。

 しかしルネリアが抱いた「令嬢たちと憧れのグレン様」の印象は、令嬢どころか皆に慕われる優しい様子である。

(グレン様は、皆に慕われているんだ)

 納得するようにルネリアがグレンを見つめる。するとあわよくば自分の話を聞いて、ルネリアが他の令嬢に嫉妬しないか、嫉妬をする顔が見られないかと期待をしていたキャロラインは酷く落胆し、ついでにとでも言うように話を続ける。

「それに、僕はグレンに恩返しをしようと思ったんだよ?」
「……は?」
「グレンってば、僕が侍女ちゃんってどんな子? って聞いたら、すごーく不機嫌になったでしょ? だから二人、あんまり上手くいってないのかと思って、仲良くなるの手伝ってあげようと思ったんだよ」
「不機嫌にもなるに決まっているだろう。何故お前に私が雇った侍女の話をしなくてはいけない。絶対に碌なことにはならないだろう。今だってこうして、お前はルネリアに……」