「貴様との婚約を破棄させてもらう!」

 国の中でも有数の権力を持つ貴族たちが、一堂に会する夜会。

 この日のためにと集められた楽団が優雅な曲を奏でている中で、発された声は高らかだった。天井に吊るされたシャンデリアからは眩い光が放たれ、まるで舞台のスポットライトの様に登場人物を照らしていく。

「王妃になることしか頭にない、心なき女め!」

 一段と輝く光を受けた国の王太子が、婚約していたはずの公爵令嬢に対し、仇を見るような目を向けての言葉だった。一方婚約破棄を突き付けられた公爵令嬢は、王太子の隣に立つ男爵令嬢を静かに見据える。男爵令嬢は王太子の腕を取り、勝ち誇った笑みを浮かべた。

「そして、今俺の隣にいる彼女をこの場で私の婚約者として、この国の未来の王妃として迎え入れると宣言しよう!」

 王太子の言葉に、周囲はざわめく。