──「え、海外に異動?大変だなー」


いつも通り家に帰ると、そんな声が聞こえてきた。

なんだ、また父さんの社員か?

そんなことを思いながらリビングに入ると、どこか懐かしい男の人がいた。

「おや、龍牙くんか?」

「あ、はい。一条龍牙です」

「久しぶりだなー!紅魅のこと、覚えているか?」

「紅魅!?あ、紅魅の父さん!」

そーそー、と笑う紅魅の父さん。

もとい、秋良さん。

「海外に異動が決まってねー。またしばらく会えなくなるから、会っとこうと思って」

「っ、紅魅も、海外に……?」