音楽室はその季節に合った温度を保っている。
教室や、理科室とかは夏は暑くて冬は寒い。
でも、音楽室だけは小学校の時からクーラー暖房完備。
小学校や中学校の時は、音楽の授業は少なくて、あんまり音楽室は使われないから、校長先生の昼寝の部屋なんだみたいな噂があったけど、今考えたら、楽器は湿度で音がすごい変わるから、そのためにクーラー暖房がついてるんだなっていうのは分かる。
じゃあどうして、音楽室にはつけるのに教室にはつけないのか。
きっとオトナの事情があるのだろう。
でも、そのオトナの事情のせいで私たち子どもが嫌な思いするのは違うと思う。
怒られて他人に八つ当たりするのと一緒じゃないか。

しかし、私は今八つ当たり的な状況にたっていた。
ぶーちゃんに廊下に呼ばれてから、ハルノの機嫌が悪い気がする。
ハルノのためのサプライズのためにぶーちゃんと話したのに、多分まだ浮気を疑っているんだと思う。
教室から音楽室に行く間も、
「二股って、楽しいと思う?」
とか、
「二股する人って、人として最低だよね。」
とか。
私とぶーちゃんの名前は出さないけど、嫌味のようなことをずっと言ってくる。
この状況にイライラしていた。
お前を喜ばせるために話してんだよ。
そう言ってやりたかった。
でも、言うとせっかくのサプライズが一瞬で台無しになる。
それなら我慢して、ハルノの気が収まるまで待っていればいいと思った。
1時間目まではいつも通りだったのに、ぶーちゃんのせいでこんなめんどくさい事に巻き込まれて、ほんとに最悪。
誰かに愚痴りたい気分だ。
でも、言うことが出来ない。
この状況は、さらに私をイライラさせた。

授業、今日はリコーダーを吹いた。
授業中、そのことを考えれば考えるほどイライラは募っていき、とうとうイライラ度MAXに達した。
「ビビビーーーーッ。」
みんなでリコーダーで演奏している時、とうとう爆ぜた。
息を思いっきりリコーダーの中に吹き込んだ。
「ちょっと誰よ。」
次は先生をいらいらさせちゃったみたい。
「私ですけど、何か。」
イライラ度MAXの私は先生に歯向かうように言ってしまった。
「なんですか!その言い方は。真面目にやりなさい。」
もう周りなんて見えなくなっていた。
「先生の教え方が悪くて、吹けませんでした。すみません。」
クラスの空気がどんどん悪くなっているのを感じた。
「もういいや。好きにしなさい。」
先生は私のことを諦めたみたい。
でも、私のせいじゃなくて、全部ハルノが勘違いするせい。

チャイムが鳴って授業が終わると、先生に呼び出されるかと思っていたけど、何も言われなかった。
だから、速攻1人で教室に帰った。
自分の席に座って次の授業の準備をしていると、ハルノが戻ってきた。
「どうしたの。割とかっこよかったけど。」
何事も無かったかのように話しかけてくるハルノ。
イラッとしたけど、さっきより少しイライラは引いてきて、ちょっと後悔していた。
だから、ハルノには平然を装って、
「あの先公私嫌いなんだわ。あいつのリコーダー吹く顔みてたらイラついちゃってさ、あはは。」
嘘をついた。
隣の席じゃなかったら、お前のせいだよって言えたかもしれないけど、隣の席で気まずくなるのはごめんだから、私は我慢した。