昼休み終了5分前のチャイムを合図に、解散となった。
はぁ〜〜っ、ドキドキしたぁ〜〜。
恐怖心は和らいだけど完全に消えてはないから、まだちょっと心臓がバクバクしてる。
だって、初対面の人と出会って数分で2人で話した上に、突然、治療のお手伝いをしましょうかって言われたんだもん。
男子恐怖症を患っている私にしてはよく耐えた。偉いぞ私。
自分を褒めながら教室に戻る。
「ただいま〜」
「おかえり〜! ねぇねぇ、さっきの沢村先輩だったんでしょ?」
ドアを開けるやいなや、興奮気味に柚季ちゃんが話しかけてきた。
「えっ、先輩のこと知ってるの⁉」
「もちろん! あのエリート病院の息子さんだし! 優しくて頭も顔もいいから、校内でもけっこう有名だよ」
えええ知らなかった。
じゃあすれ違ったあの女の子達は、既に先輩のことを知ってて見惚れてたのか。
思い返すと、すごく礼儀正しくて、言葉遣いも丁寧で、動作も優雅で。
初対面だったけど、あの数分間だけでも、彼の人柄の良さは充分感じられた。



