「……あっ、血飲みに来たんだよね? ごめんね、朝あげられなくて」

「ううん、全然。なら腕からもらおうかな。千冬、悪いけどいい?」

「はいよー」



渋々を返事をして千冬は部屋から出ていった。


毎度毎度ごめんねと思いながらも、袖をまくって腕をタオルで拭く。

汗がついてるかもしれないからね。



「それじゃ、いただきます」

「はーい」



体を横に向けて腕を差し出すと、いつものように肘と手が優しく包み込まれた。



『……なんで俺じゃねーんだよ』


「っ……!」



すると突然、脳内に翼の声が響いてきて、咄嗟に腕を振り払った。



「ど、どした?」

「ごめんっ、ちょっとビックリしただけ」



ふぅ、と深呼吸をして、再び腕を差し出すも……。


『なんでアイツなんだよ……‼』


手首に手が触れた瞬間、またも彼の声が響いてきて。



「風花……?」

「っ──!」



『────俺のものにしてやる』


真っ赤な瞳に琥珀色の瞳が重なり、ドクンと心臓が嫌な音を立てた。