「ええっ! あの夜城くんが? そんなにわかるくらい顔に出てたの?」
「他の人からしてみたら普段と変わりないんだけど、俺にはそう見えたかな。で、パン売りに行ったら一瞬にして目が輝いたから、相当疲れてたんだなって」
「あらまぁ」
「…………千冬、もう1個パンちょうだい」
パンを完食し、お財布から硬貨を取り出す。
「え? いいけど……急にどうした?」
「潤くんにあげるの」
「えっ⁉ さっき動揺してたのに⁉」
「っ……そうだけど、たくさん働いたんだから労わないと!」
100円玉をチョコパンと交換し、潤くんのクラスのお店がある中庭へ向かう。
お店の種類にもよるけれど、早く終わらないかと考えていたほど、裏方だけでも目が回るくらい忙しかった。
ずっとお客さんの視線を浴びながら、一瞬たりとも気を抜かずに、長時間笑顔で接客するのは精神的にも大変だと思う。
こんなの、お節介って思われちゃうかもしれないけど……疲れた時には甘い物って言うし。
少しでも疲れが取れてくれたらいいなって思ったんだ。



