「……やっぱあざといね」

「そう?」

「それ。その、時々タメ口になるところ!
他の人にはしないでよ?」

「わかってますよ」



ふにゃあと頬を緩ませたかと思えば、今度は右頬に柔らかい感触が広がった。



「……ちょっと透瑠くん?」

「えへへ。今度は俺がドキドキさせます」



赤くなった耳に手が触れ、再び頬を包み込まれた。


ダメだ、このままじゃらちが明かない。

お互い負けず嫌いだから、どっちかが折れないと終わらないぞ……。



「次は耳かおでこ、どっちがいい?」

「……口」



耳を触っている手を取ってボソッと答え、目の前の唇に自分の唇を重ねた。

案の定、透瑠くんは目をまん丸にして固まっている。


自分からキスしたのに、急に恥ずかしくなってきた……。



「そ……そろそろ帰るね」

「待って」



逃げ出したくなって部屋を出ようと立ち上がった。

しかし、腕を引っ張られ──すぐに口を塞がれた。



「……今日は俺の勝ちってことで」

「……次は負けないからね?」



視線を絡め、笑い合う。

甘えん坊であざとい彼は、どうやら負けず嫌いなキス魔くんだったようです。