「ありがとう」
それでも、救われたことは確かだから。
お礼を言って、にっこり笑ってみせる。
「はぁ、本当に可愛い……」
「こんないい子を傷つけるなんて……咲と寺本君が許せない!それに、伊鳥ちゃんのお姉さんも!」
「うんうん。あ、そういえば、お姉さんはまだあんな感じなの?」
少し空気に緊張感が漂う。
皆、心配してるみたいだった。
美術部の皆とは特に仲が良かったから、私の複雑な家庭環境を話しているんだ。
私がどんな扱いを受けてるのかも知ってる。
「うん、変わらないかな。奈々美さんだけじゃなくて、裕美さんも」
目を伏せて、私はそう言った。
あんな環境にもう慣れてしまったけど、最初は耐えられなかった。
辛い生活に、私は部屋で隠れて泣いてたっけ……
その時は思い出し、少し懐かしくなった。
裕美さん達とのいい思い出なんか、1つもないけど……
「うわぁ、最低!」
「耐えられなくなったら、私の家に来ていいからね!」
「私の家もOKだよ!」
優しいな……
私の周りの人は、優しい人ばっかりだ。



