だからこそ、気づけなかった。
周りを見ることができてなかった。
そのせいだろうね。
あんなことになったのは……
やっぱり幸せは続かなかった。
「伊鳥って最近調子乗ってるよね」
部活中、無表情の咲からそう言われた。
その表情と言葉に凍りつく。
部室の空気と一緒に。
「さ、き?」
「気に食わない」
吐き捨てるような言葉。
私の心をえぐるには十分なくらいの。
「周りがちゃんと見えてるの?浮かれすぎじゃない?」
確かに、それは咲の言うとおり。
「ねぇ、伊鳥。あんたは、寧々ちゃんが亜美ちゃんと虐められてるの知ってた?」
えっ、嘘……
寧々ちゃんが亜美ちゃんを……?
亜美ちゃんに目を向けると、目をそらされた。
それが事実だと語っていた。
「あんたがそんなだから、相談することもできなかったんだよ?」
本当に周りが見えてなかった。
亜美ちゃんが虐められてたなんて……全く知らなかった。
ショックを受けている私に、さらに畳み掛けた。
「他の子も気づいてたんだよ。気づいてないのは、あんただけ」
皆、気づいてたんだ……
ほんとに私酷すぎる。
「伊鳥の脳内って、お花畑だよね」
「ちょっと、咲ちゃん!やめなよ!」
きーちゃんが私を庇ってくれるけど、ダメージは大きくて。



