「ふふっ。はい、伊鳥ちゃん。これ、制服だから。着てみて?」
「分かりました」
「神崎君、一緒に出るわよ」
「はい」
伊鳥ちゃんが着替えるから、オーナーと一緒に部屋を出る。
「ねぇ、神崎君」
「何ですか?」
聞かれることはなんとなく分かっていた。
「伊鳥ちゃんのこと好きなの?」
やっぱり。
「どうしてそう思うんですか?」
「だって、あんな風に自分から女の子の教育係を引き受けたことも手を繋いでるのも見たことないわ。私の見解、違うの?」
「いえ、合ってます。俺は伊鳥ちゃんのことが好きです」
平然と言ってのけてみせた。
この気持ちに偽りはない。
俺はきっと分かりやすいのだろう……
「まぁ、やっぱりそうなのね!伊鳥ちゃんは本当にすごいわ。まさか、女嫌いな神崎君の心を掴むなんて」
「はい、最初は思いもしませんでした」
でも、俺は伊鳥ちゃんだからこそ、好きになったんだ。
それ以外の人を好きになったことはない。
思えば、伊鳥ちゃんが俺の初恋だ。
伊鳥ちゃんはどうなんだろうか……
そう思ったところで、前伊鳥ちゃんが熱で倒れた時のことを思い出した。
寝言で頼君と言っていたけど……そいつとはどういう関係なんだ?
彼氏、とか……?
考えたくないけど、好きな人とかかもしれない。



