まぁ、でもそれが……
「まぁ、それが伊鳥ちゃんだけど」
「どういうことですか?」
「気にしないでいいよ。俺の独り言だから」
伊鳥ちゃんのそんなところも可愛いとかどうかしてる。
女嫌いの俺がこんなにも伊鳥ちゃんを好きになってしまうとは、最初の頃は夢にも思わなかった。
「じゃあ、仕事について教えるから。接客の仕事はだいたいオーダーを聞きに行って厨房に伝えることと料理を運ぶことの2つ。そこまで仕事はないから。今日は1日、ずっと俺達接客係の動きを見とくといいよ。分からないことがあれば、聞いて。教えるから」
「あ、はい。分かりました」
素直に頷いていて、本当に可愛い。
絶対取られたくない。
「伊鳥ちゃん、この制服着てみてくれるかしら?」
「あ、分かりました」
その時、オーナーが伊鳥ちゃんを呼ぶ声がした。
「……俺も一緒に行く。脱衣室はこっちだから」
伊鳥ちゃんの手を引っ張って、脱衣室に連れていった。
「あらあら、仲良いのね~」
オーナーは俺と伊鳥ちゃんの手が繋がってるのを見てびっくりする。
顔はニヤニヤしてるけど。
まぁ、俺が女にこんなことしたことないから余計にそうだよな。
「あの、輝楽さん……」
「分かった、離すから」
伊鳥ちゃんの言いたいことが分かって、名残惜しくなりながら離す。



