いつの間にか、君に恋していたんだ。



布団をかけ、少しだけ伊鳥ちゃんの寝顔を眺める。


……本当に整ってる。


伊鳥ちゃんを初めて見た時も思ってはいたけど……


でも、本人に至ってはその自覚がないもんな。


伊鳥ちゃんが起きてたら変態だって言われたかもしれないけど、じっくり観察した。


色づいた頬、少し開いた唇、寝ていても整ってると分かる顔立ち。


……可愛い。


感覚的にそう思った。


女に対してこんなこと思ったことなかったのに。


何もかも伊鳥ちゃんに持っていかれたような感覚だった。


俺は無意識に自分の唇を近づけた。


伊鳥ちゃんの唇とあと少しで重なるというところで我に返る。


……俺、何しようとした?


自分のしようとしていたことが信じられなくて、同時に顔が熱くなる。


思考が変になってるんだ。


仮にも、女の部屋にいるわけだし。


きっとそうだ……


頭を冷やすためにも1回伊鳥ちゃんの部屋から出た。


あと、氷枕もらうためにも。


階段を降りていると、声が聞こえてきた。


「あいつ、本当にムカつく!」


「きっとお姫様気分に浸ってるのよ。そんなかっこいい人なら、あんな子にすぐ飽きるでしょう?」


「ふっ。まぁ、そうよね。お母さん、さすが」


母親までそんなこと言うのか……