「いい。俺がちゃんと送り届けるから。じゃあな」
やっぱり分からない。
何で、伊鳥ちゃんにだけこんな気持ちになるのか……
この気持ちの名前も。
俺がいなくなった後で……
「マジか。あいつ、あの子のこと好きすぎだろ」
そんなことを呟いてたなんて、知るよしもなかった。
伊鳥ちゃんの家まであと少し。
あの時送っておいてよかったな。
でないと、家がどこにあるのか分からずじまいだった。
もしそうなったら、俺の部屋で看病しないといけなくなるし。
まぁ、わざわざ連れていくのは少しめんどくさいけど。
……それにしても、伊鳥ちゃん軽すぎないか。
ちゃんと食ってるんだろうか……
そんな心配をしていたら、伊鳥ちゃんの家に着いた。
その時、ちょうど女が伊鳥ちゃんの家から出てきた。
派手で化粧が濃く、俺の周りで騒いでる女とあまり変わらない。
この女、伊鳥ちゃんの姉か……?
ふと前に伊鳥ちゃんが家族構成について話していて、姉がいたことを思い出した。
でも、顔は全然似てなかった。
じいと観察するようにその女を見てると、目が合った。
途端にびっくりしたように女の瞳が大きくなる。
「あ、輝楽さん!」
その反応はいつも騒いでる女がしてる反応と一緒で。
この女もそうか。



