「今日球技大会だね」
「そうですね」
「つれないなー、もっと明るくいこうよ!」
今それを私に求められても困りますよ。
「今それをふゆに求めても無駄ですよ」
「そうだろうね」
ちらりと湊君の方を見た先輩。
「ほんと、ふゆちゃんって……」
私に視線を戻して、何やら呟く。
何言ってるのかは分からないけど……
途中で言葉を切って、今度は……
「ちょっ、佐野先輩!」
先輩に抱きつかれた。
視線が……視線が怖い。
特に女の先輩からすごい目で睨まれてる。
「ふゆから離れてください!」
「紗奈ちゃんのお願いは聞けないな。今、ふゆちゃんからパワーをもらってるから」
意味の分からないことを言って、ぎゅっと抱きつかれる。
ドキドキしている自分を自覚して、もっと恥ずかしくなった。
でも、こんなのしょうがない。
男慣れなんて全くしてないから、この状況でドキドキしない人がいたら教えてほしい。
心臓がすごいことになりそうだから、離れようとすると全然離れられない。
その時、ふわっといい匂いが鼻をかすめた。
鼻にしつこくなくて、それでいて甘い香りが。
これ、香水かな……?
間違いなくその匂いは目の前の先輩の匂いなんだけど……



