こんな低い声を出してる佐野先輩を見たことなかった。


「バラされたくなきゃ、ふゆちゃんに謝りな。それに、僕の友達にも」


激しい怒りが目にも込められていた。


「そうだな。謝ってもらおうか」


2人に言われて、久隆君は一応謝ってくれた。


「ごめん、一ノ瀬さん」


その声は反省してるように聞こえなかった。


でもそのまま行ってしまい、私達3人が残された。


「子供だね、あいつ」


「ちゃんと謝ることもできないのか」


呆れたような顔の湊君と先輩。


お礼、言わなきゃ。


「あの、ありがとうございました。湊君、佐野先輩」


「ふゆが無事でよかった」


「うん、ほんとだよ」


湊君は優しく私の頭を撫でてくれた。


私はぎゅっと湊君に抱きつく。


……こんなこと、普段なら絶対にしない。


湊君は戸惑ってたみたいだけど、静かに手を回してくれた。


佐野先輩もいるのに……


でも、止められなかった。



湊君のことをより強く想う。


もっと、湊君のことを好きになった気がするよ。



ーーその時、先輩が私達のことを少し切なそうに見ていたなんて、私は気づかなかった。



この後、紗奈ちゃんにこのことを話した。


すると、めちゃくちゃ怒ってくれて。


こんな風に怒ってくれる人がいて、幸せだなって心から思う。


ほんとによかった。


もうこれからは、そう簡単に信用しないようにしないと……


そう心に決めた。