凍堂先輩が佐野先輩に詰め寄って耳打ちしてる。
私は近くにいたから、偶然聞こえた。
紗奈ちゃんには聞こえてないだろうけど。
凍堂先輩、すごく声が低かったな……
ちょっと怖かった。
「もう、佐野先輩やだ」
紗奈ちゃんが私の方に近寄ってきて、そんなことを呟いた。
私は紗奈ちゃんの気持ちがなんとなく分かり、苦笑いを浮かべる。
「まぁ、本人にはバレてないし、いいんじゃないかな」
「そうだけど……」
明らかに楽しんでるもんね。
そう言いたくなる気持ちは分かる。
「よし、お弁当食べたし戻ろうか。僕はふゆちゃんとなるべく2人きりでいたいから、ふゆちゃんと一緒に途中まで行くよ。邪魔されたくないし。ふゆちゃん、いい?」
「あ、はい」
こんな風に普通に言えるところはすごいと思うけど、ずるいとも思う。
私はこんな簡単には言えないから。
「はぁ、いいですけど」
「よく普通に言えるね、そんな言葉」
呆れられても佐野先輩は全く気にしてる様子を見せず、にこっと笑った。
「そっちだって、2人でいたいと思うでしょ。ウィンウィンだと思うけど?」



