「うーん、それが分からないんだよね」


「はぁ!?分からない!?信じられない!もしかして、佐野先輩中村さんと別れずに付き合ってるわけじゃないわよね?」


「もしかしたら、そうかもしれないね」


私もさっきそう考えたし。


「もう、ふゆは呑気ね。もしそうだとしたら、浮気よ。いいの?」


「ちゃんと後でケリをつけてくれれば、私は別にいいよ」


「ふゆ、優しすぎ」   


「別に優しくないよ。皆、そう思うと思うし」


「私だったら、絶対そう思わない」


そうなのか…… 


でも、やっぱり私は別に大丈夫だ。


もしかして、惚れた弱みかな?


「ふゆはほんと好きになったら、とことん一途よね。さっきの顔も佐野先輩が見たら、可愛いって連発すると思うわ」

 
「さっきの顔って?」


どんな顔してたの、私……


「佐野先輩が来た瞬間、顔が輝いてたわ。もう本当に嬉しそうで幸せそうで、まるでご主人様が帰ってきた犬のようだった」


そんな顔してたんだ、私……


今更ながら恥ずかしくなって、顔を覆った。
  

「ふゆ、恥ずかしがってるの?」


「うん。だって、そんな顔してたのかと思うと恥ずかしいよ」


「ふゆ、可愛い!」 


ガバッと抱きつかれる。

 
可愛くないよ。


可愛いのは、紗奈ちゃんの方。