決して顔で好きになったわけじゃないと思うけど。


「それで、湊君。わざわざ人気のない廊下まで連れ出して何の用かな?」


できるだけ笑顔で言うと、湊君に舌打ちされた。


怖いな……腹黒い時の律みたいだ。


「あなた、分かってますよね」


「まぁ、なんとなく。でも、湊君の口から聞かないと合ってるかは分からないし」


もしかしたら、という仮説でしかない。


まぁ、多分合ってるんだろうけどね。


「俺はふゆのことが好きです」


やっぱり……


ようやく気づいたんだ……ふゆちゃんのことが好きだってことに。


「それを僕に言ってどうするの?」


「ただ知ってもらおうと思って。邪魔しないでくださいよ、佐野先輩」


「うん、もちろん邪魔はしないよ」


本当は邪魔したいと思うほど乱されている。


でも、湊君の前では出さない。


一応笑顔は浮かべてる。


「ふゆは俺がもらいますから。あなたには、負けません。では、話はそれだけなので」


そう言ってさっさと去っていく湊君。


内心の僕の気持ちは知らないだろうね、湊君は……


僕がどれだけ今不安か。


まぁ、僕が隠したんだけどね。


ため息をついて、これからのことを考えた。


湊君はふゆちゃんのことが好きだと気づいた。


ふゆちゃんは元から湊君のことが好き。


両想いだ。


ふゆちゃんと距離はだいぶ縮まったと思うけど、それでも不安は不安で、期待なんてほとんどしてなかった。


もう僕は終わったかもしれない。


もういなくなってしまった後ろ姿を追想しながらそう思った。