それは、湊君と萌が別れる1日前。
その時、萌と湊君が距離を置いてるということが学校で少し噂になっていた。
とはいっても、広い範囲で噂になっていたわけではなくて、少数の人が知っているだけのような広がり方だった。
それでも、最初聞いた時は本当に驚いた。
まさかあの2人がって。
もしかしたら……
「佐野先輩」
僕の名前を呼ばれて聞こえた方向を見ると、そこには湊君が立っていた。
とても目立っていて、女の子達は黄色い悲鳴を上げた。
「嘘、あの子檜山君でしょ!」
「佐野君を呼んでたし、何か用なのかな?」
「いずれにしろ、ここで見ることができるなんて感激!」
湊君はモテるなぁ……
その様子に僕は感心しつつ、湊君がいる扉まで駆け寄った。
「どうしたの?湊君」
にこっと笑いかけながら聞いたのに、湊君は険しい顔。
「余裕ですか」
「何が?」
「……何でもないです。佐野先輩、今から来てください」
「分かった、いいよ」
なんとなく分かった。
どうして、僕の教室にわざわざ来て僕を呼び出したのか。
湊君は人気のない廊下で立ち止まり、こちらを向く。
……近くで見ると、本当に整っている。
ふゆちゃんや萌が好きになるのも分かるよ。



