「それだけって?」


『ふゆ、本当は気づいてるんじゃないの?自分の気持ちに』


紗奈ちゃんは分かってる。


でも、まだ認めたくないの。


だって、あんなに好きだったのに……


「それより、紗奈ちゃんどうだった?お弁当、凍堂先輩と食べたんでしょ?」


今朝のように誤魔化す。


わざと話題を変えた。


『誤魔化すつもりね。なら、誤魔化されてあげるわ。律先輩とは少し進展できたと思う』


「ふふっ、よかったね」


凍堂先輩の気持ちは知ってるから、嬉しさが湧き上がってくる。


『何笑ってるのよ?』


「ううん、何でもないよ」


紗奈ちゃんが知るわけないから、不思議そうな声だった。


「紗奈ちゃんの気持ち伝えられたらいいね」


『うん、いつかね。じゃあ、ふゆ。また明日学校で』


「うん、またね。聞いてくれてありがとう」


ピッと電話が切れて、さっきの静けさが戻る。


でも、さっきと違って気分が軽くなっていた。


紗奈ちゃんに電話して本当によかった……


思い返すと、紗奈ちゃんに言われた言葉が頭をぐるぐる回る。


紗奈ちゃんは私の気持ちの変化に気づいてる。


だから、あんなことを聞いたんだよね。


考えれば考えるほど、闇の中に行く。


何でこんなことになったのかな?


最初は本当に好きだったのに……


やっぱり、まだ認めたくない。


この気持ちを認めるわけにはいかない。


思考が半分そっちのけで、深い睡魔が襲ってきた。