あ、よかった。
普通に会話できてる。
そのことにホッとしつつ、お弁当を広げた。
「この前もそうだけど、ふゆちゃんのお弁当美味しそうだね」
佐野先輩がひょこっと私のお弁当を覗きこんでそう言った。
距離が近くなって、途端に心臓の音が速くなる。
「ち、近いです!」
「今日はそればっかり言ってるね。もしかして、僕のこと意識してくれてるの?」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら言われた。
多分、冗談のつもりで言ってるんだと思う。
でも、図星で……私は顔が赤くなるのを感じた。
「あはは、なわけないか」
私の顔を見ていたはずだけど、佐野先輩は今度は自嘲気味な笑みを浮かべて呟いた。
期待、しないようにしてるのかな……
あくまで私は湊君のことを好きだと佐野先輩は思ってるから。
佐野先輩が私のことを好きな前提だ。
自意識過剰、そう言われてもしょうがない状況。
恥ずかしくなってくる。
こんなことを考えている私も、今の自分の気持ちも。
「さ、佐野先輩のお弁当も美味しそうですよね。前も言いましたけど」
「ありがとう」
そんな気持ちを振り払うつもりで、私は声をかけた。



