いつもなら湊君に勘違いされる、そんなことも浮かんでこなかった。


やっぱり、私は変だ。


「なんか、よそよそしいね。いつもの威勢はどこ行ったの?」


こちらを覗きこんでくる佐野先輩。


もちろん距離が近くなって……


「ち、近いです!退いてください!」


やだ……


こんな私に気づきたくない。


「ふゆちゃん?」


そんな私に不思議そうな顔をしていたけど、今日はすぐに離れてくれた。


「それ言いにわざわざ来たんですか?」


「うん。牽制しとこうと思って。ふゆちゃん、モテるし」


「……何言ってるんですか?」


私がモテる……?


そんなのありえない。


私のことが好きなんて、相当な物好きだと思う。


「分かってないね。ふゆちゃんのこと好きな人は大変だなぁ。まぁ、僕もその中に入るけど」


まるで告白みたいな言葉にドキドキしてくる。


気持ちはちゃんと知ってるけど……


もう、すぐそう言うこと言うんだから。


佐野先輩は……


「ふっ。ふゆちゃんの顔見れたし、もう行くね」


片手を上げて、自分の教室へと戻っていくのを見届けた。


その後で、教室内で軽く騒ぎが起こる。