「ふゆちゃん、ごめんね」


「えっ」


謝られたことに驚いて顔を上げると、困ったような顔をした佐野先輩がいた。


「僕のせいで嫌な目に遭わせちゃって。この前もそうだった。でも、ふゆちゃんと離れることができない。こんな僕で本当にごめんね」


そんなの別にいいのに……


佐野先輩は私を庇ってくれた。


私を傷つけたら許さないと女の子に言ってくれた。


そんな佐野先輩が謝る必要なんてない。


「別に大丈夫ですよ。そんなに傷ついてないので」


それは少し嘘だけど、今は大丈夫。


「佐野先輩、庇ってくださりありがとうございました。それに、デートも。今日は本当に楽しかったです」


この気持ちは本当なんだよ。


水族館なんて行くの久しぶりで、今日は本当に楽しかった。


佐野先輩の優しさもよく分かったし、最高のデートだった。


「そう言ってもらえて嬉しいよ。今日はありがとう。ふゆちゃんと一緒で、僕も久々に本当に楽しかった」


最後ににっこりと笑ってくれた。


その笑顔は今まで1番見た中で柔らかくて綺麗で。


整ってる顔でそれをされたら、凶器でしかない。


ドキドキ……より加速していく心臓。


ーー佐野先輩への気持ちが決定的に変わった瞬間だった。