「でも……」


「いいから。それに、ふゆちゃんは僕の家がお金持ちだってこと知ってるでしょ?払わせておけばいいんだよ」


まぁ、確かに……頭の中に佐野先輩の家が浮かんだ。


あんな大きい家に住んでいても、親が帰ってもいない……それで、佐野先輩は寂しい思いをしてきたんだよね。


虚しいだろうな。


お金はあっても、寂しさを埋めることはできないだろうし。


でも、だからと言って、奢ってもらうのはいいのかな……?

「ふゆちゃんの考えてること分かりやすいよ。ほんと、優しいね。ふゆちゃんは」


「そんなことないですよ」

 
「ううん、優しいよ」


そんなことないのに……   


佐野先輩は変わってる。


「これ以上言っても違うって言い張るだけだろうし、やめておこうか。それより、チケットは僕の奢りでいいよね?」


「分かりました。お言葉に甘えさせてもらいます」


佐野先輩にいくら言っても、きっと聞かない。


強引なところもあるよね。


「じゃ、いいよね。渡しに行こう」


佐野先輩を先頭にして、とは言っても私と佐野先輩だけだけど……スタッフの人にチケットを渡して、ゲートみたいなのを潜った。