それは、失礼。
でも、いつの間にかこんな会話をしてるうちに湊君と萌ちゃんのキスシーンなんて忘れてしまっていた。
今、思い出してしまったけど……
だからか、また急に涙が出てきた。
「もしかして、思い出しちゃった?」
「……っすみません」
「いいよ。僕の胸を貸してあげるから」
抱きしめられたままの体制で、私は顔をうずめて泣いた。
涙が枯れるまで……もう泣かなくなるまで泣き続けた。
「本当にすみません。ありがとうございました」
こんなの佐野先輩からしてみれば、迷惑でしかないはず。
なのに、こんな姿ばかり見せている。
「ううん、いいの。気にしないで。僕が好きでやってるんだから」
にこにこ笑ってる佐野先輩を見ながら、今度は萌ちゃんの言葉を思い出した。
『一応言っとくけど、佑都先輩はそんなに悪い人じゃないよ』
うん、そうだね。
佐野先輩は悪い人じゃない。
球技大会の時、勉強の時、ちゃんと私に教えてくれた。
優しい人だって、今はちゃんと分かってる。
「佐野先輩は優しいですね」
「そんなことないよ。僕がこんな風にするのはふゆちゃんだけ」
他の女の子にも言っていそうな言葉。
「そうですか。それはありがとうございます」
信用はもちろんしてなかったけど、嬉しいは嬉しいかもしれない。



