狼姫と野獣

じとっと見ていたら「なーに?」と小首をあざとくかしげる。


「倖真、私には通用しないよ?」

「あー負けた。今のは永遠の方がかわいい」


同じような仕草をすると倖真はニヤッと笑う。

あ、ちょっと素が出た。

と思った瞬間王子フェイスに戻って女の子たちに手を振っている。

すごい、役者さながらの演技力。

いっそ俳優になればいいのに。



なんて思いながら校舎を出て迎えに来た車に乗り込む。

車はいつもと違う道を走って目的地に向かう。


「はあ、珍しく涼風がお願いがあるっていうからなんだろうと思ったら永遠に会いたいだなんて」


納得いかない表情で口を尖らせるのは倖真。

王子様モードはここでもう解除みたい。


「永遠が羨ましいよ。今日は手作りのクッキー永遠にあげるって言ってた」

「倖真のも作ってくれるって。涼風ちゃん優しいから」

「その“ついで感”まじでヤダ。俺に作るついでならいいけどさぁ」


はぁぁ、と助手席で長いため息をつく倖真。

こんなに落ち込むには理由がある。


「とか言ってもらったら嬉しいくせに」

「そりゃあね?かわいい妹が作ってくれたものならたとえ黒焦げの炭でも食べるよ俺は」


実は倖真、超がつくほどのシスコンだから。