狼姫と野獣

私もカップにコーヒーを注いで、お兄ちゃんと束の間のティータイムを楽しんだ。



「学校どうだ?」

「ふふ、お父さんみたいなこと言うね。
楽しいよ、もうすぐ卒業なのがさみしい」

「高校受験もうすぐだっけ?まあ、永遠なら大丈夫と思う」

「うん、この前模試がいい結果だったからこのままいけば大丈夫と思う。
唯も同じ高校行けるように勉強頑張るって言ってた」

「一緒の高校行けたらいいな」



笑いながお兄ちゃんはコーヒーを飲む。

それからカップを口元から外すと、表情を変えて口を開いた。



「そういえば……快は学校に来たか?」

「……」



私は思わず黙ってしまった。

まさかお兄ちゃんがその話題を振ってくるとは思わなかったから。



「なんで、快のこと聞くの?」

「永遠が心配なんだ」

「……」

「そいつのことをまだ想ってるならやめた方がいい。忘れるしかないと思う」



楽しい気持ちが一気に冷めていく。

図星をつかれて悔しくなった。だからってお兄ちゃんに当たっても意味が無い。

兄として、私を想っての発言だって分かってるのに。



「お兄ちゃんには関係ないからいいでしょ。
……最近のお兄ちゃん、嫌い」



だけど口から出たのは嫌悪を示す言葉で。

私が「嫌い」と口にした瞬間、お兄ちゃんは素早くこっちを見た。

私から見ても分かるくらい、すごく驚いた顔をしてショックを受けている。

あ、しまった。そんな顔させるつもりじゃ……。



「ぶはは!嫌いとか言われてんじゃん絆!ざまぁみろ!」



謝ろうとした時、ちょうど帰宅した刹那が横槍を入れてきた。